通訳案内士の出題予想、Claude・Gemini・ChatGPTに競わせてみた【2026年度一次試験】
過去5年の出題傾向をAIで全分析で集計した2,456項目のデータがあります。これを Claude・Gemini・ChatGPT の3つにまったく同じプロンプトで渡し、2026年度の出題を予想させました。
狙いは「当てること」ではありません。独立に推論した3つのAIが同じ結論に着地したなら、その項目はデータの裏づけが強い——逆に言えば、割れた科目は「データからは決まらない」ということです。そこを見たかった。
先にお断りします。これは実験であって、的中の保証ではありません。 3つのAIが一致した項目も、根拠はすべて同じ集計データです。同じ材料を渡せば似た結論が出るのは当たり前で、一致は「正しさ」ではなく「そのデータから素直に導ける度合い」を示すにすぎません。ここは最後の章でもう一度触れます。
実験のルール
条件を揃えることが実験の肝なので、次のように統一しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 渡したデータ | 2021〜2025年度の公式過去問から抽出した2,456項目の集計(分野別・都道府県別・3回以上出題項目・空白県) |
| プロンプト | 3者とも一字一句同じ。「この集計だけを根拠にすること」を明示 |
| 出力形式 | 4科目×5項目=計20項目。各項目に根拠を1行。最後に科目ごとの「最も自信のある1問」 |
| 実行 | それぞれ独立したセッション。他のAIの回答は見せていない |
使ったモデルは Claude Opus 5、Gemini 3.6 Flash(強化版思考モード)、ChatGPT GPT-5.6 Sol(Plus) です。
条件を1点だけ補足します。Gemini のみ Flash 系で、他2つの最上位モデルとは階層が違います。ここは完全に同一条件とは言えないので、以下の結果を読むときは差し引いてください。
結論:一致したのは4項目だけ
いきなり結果です。全20項目×3者=のべ60項目のうち、3者そろって挙げた項目はたった4つでした。
| 科目 | 3者一致した項目 |
|---|---|
| 日本地理 | 箱根・芦ノ湖/琵琶湖 |
| 日本歴史 | なし |
| 一般常識 | 訪日外国人の国・地域別ランキング |
| 通訳案内の実務 | 募集型・受注型企画旅行 |
そして「最も自信のある1問」も、見事に科目で明暗が分かれました。
| 科目 | Claude | Gemini | ChatGPT | |
|---|---|---|---|---|
| 地理 | 北上川 | 吉野川 | 箱根・芦ノ湖 | 全員バラバラ |
| 歴史 | 豊臣秀吉 | 豊臣秀吉 | 徳川家康 | 2対1 |
| 一般常識 | 訪日客ランキング | 訪日客ランキング | 訪日客ランキング | 完全一致 |
| 実務 | 募集型/受注型 | 募集型企画旅行 | 募集型企画旅行 | 完全一致 |
一般常識と実務は3つとも同じ答え。一方で地理は本命が3人3様で、歴史にいたっては20項目中ひとつも一致しませんでした。
科目別の全結果
日本地理
| 項目 | Claude | Gemini | ChatGPT |
|---|---|---|---|
| 箱根・芦ノ湖 | ○ | ○ | ○ |
| 琵琶湖 | ○ | ○ | ○ |
| 北上川 | ○ | — | ○ |
| 成田国際空港 | — | ○ | ○ |
| 後楽園 | — | ○ | ○ |
| 吉野川 | — | ○ | — |
| 犬吠埼 | ○ | — | — |
| 猪苗代湖 | ○ | — | — |
ここで面白いのは、県のレベルで見ると一致率がぐっと上がることです。神奈川・千葉・滋賀は3者とも指名しました。割れたのは「その県の何が出るか」だけ。千葉は Gemini と ChatGPT が成田国際空港、Claude だけが犬吠埼を選んでいます。
理由は分かりやすくて、集計データには県名は入っているが地名は入っていないからです。「千葉が空白県」までは事実で、そこから先の「じゃあ成田か、犬吠埼か」は各AIの推測でしかない。ちなみに、この限界を自分から注記したのは ChatGPT だけでした(「集計から直接名称が示されているわけではなく、空白県と頻出分野を組み合わせた予測です」)。
日本歴史(一致ゼロ)
| 項目 | Claude | Gemini | ChatGPT |
|---|---|---|---|
| 豊臣秀吉 | ○ | ○ | — |
| 徳川家康 | — | ○ | ○ |
| 徳川家光 | ○ | — | ○ |
| 遣唐使 | — | ○ | ○ |
| 織田信長 | — | — | ○ |
| 足利義満 | — | — | ○ |
| 武田信玄 | — | ○ | — |
| 臨済宗 | — | ○ | — |
| 栄西 | ○ | — | — |
| 徳川光圀・水戸藩 | ○ | — | — |
| 高千穂・日向神話 | ○ | — | — |
3者一致はゼロ。「2つが挙げた」項目でさえ4つしかありません。
原因は集計データを見れば明らかです。歴史は884項目のうち人物が232項目と突出していて、しかも3回以上出た人物が6人もいる(秀吉・家康・信長・家光・信玄・義満)。地理の「3回以上」が3項目しかなかったのと対照的で、有力候補が多すぎて絞り込めないんです。
Gemini と Claude が秀吉、ChatGPT が家康。どれも「5年で3〜4回」という同じ根拠から出ていて、優劣がつきません。歴史で「AIが言うから」を信じる意味は、この科目に関してはほぼないと考えたほうがいいです。
なお Claude の「栄西」と Gemini の「臨済宗」は、名前は違いますが同じ論点です。準一致として数えるならこれが唯一。
一般常識
| 項目 | Claude | Gemini | ChatGPT |
|---|---|---|---|
| 訪日客の国・地域別ランキング | ○ | ○ | ○ |
| 観光立国推進基本計画 | — | ○ | ○ |
| DMO(観光地域づくり法人) | ○ | — | ○ |
| 歌舞伎 | — | ○ | — |
| 観光白書の統計 | — | ○ | — |
| 持続可能な観光・オーバーツーリズム | — | ○ | — |
| 文化財保護法の国宝・重要文化財 | — | — | ○ |
| 国際観光旅客税 | — | — | ○ |
| 旅行消費額の費目別構成 | ○ | — | — |
| ユネスコ無形文化遺産「伝統的酒造り」 | ○ | — | — |
| 大阪・関西万博 | ○ | — | — |
訪日客の国・地域別ランキングは3者とも本命指名。集計上、一般常識で3回出題が確認できる唯一の項目なので、これは選ばれるべくして選ばれています。
面白いのは時事の扱いが割れたこと。ChatGPT は「時事問題が全体の4%にすぎないため、短期的ニュースより既存制度を優先」と明言して意識的に避けました。逆に Claude は大阪・関西万博、Gemini はオーバーツーリズムを入れています。同じ「時事は4%」という数字を見て、片方は「だから避ける」、片方は「だから少しだけ賭ける」と読んだわけです。
通訳案内の実務
| 項目 | Claude | Gemini | ChatGPT |
|---|---|---|---|
| 募集型・受注型企画旅行 | ○ | ○ | ○ |
| 登録研修機関 | — | ○ | ○ |
| 景品表示法 | — | ○ | — |
| 地域通訳案内士 | — | — | ○ |
| 旅程管理主任者 | ○ | — | — |
| ハラール対応 | — | ○ | — |
| 食物アレルギー・アナフィラキシー | — | — | ○ |
| ベジタリアンの分類 | ○ | — | — |
| カーラーの救命曲線 | ○ | — | — |
募集型・受注型企画旅行は文句なしの本命。5年で4回・3回と、実務で最も繰り返されている概念です。
そして食事制限まわりの分裂が象徴的でした。3つとも「食事制限・宗教対応が74項目で第2位分野」という同じ数字を見て、1項目ずつ挙げています。ところが具体例は Claude がベジタリアンの分類、Gemini がハラール、ChatGPT が食物アレルギー——全部違う。分野が出ることには全員合意していて、中身だけ割れた形です。
この分裂は、受験生にとってはむしろ朗報です。「食事制限は出る」という点は3者一致なので、ベジタリアン・ハラール・アレルギーの3つとも押さえておけばいい。どれが来ても取れます。
AI3社の「読み方の癖」
同じデータを見ても、推論の型がはっきり違いました。ここがこの実験でいちばん面白かった部分です。
| 読み方の型 | |
|---|---|
| Claude | 空白重視。「出ていない期間が長いものが戻る」に賭ける。直近2年ゼロの5県すべてから1つずつ拾って分散させ、歴史では5年ゼロの茨城・宮崎まで踏み込んだ。3者で最も「他が挙げなかった項目」が多い |
| Gemini | 連続の勢い重視。直近で出ているものを続けて挙げる。吉野川(2024・2025と連続)を地理の本命にしたのは3者で唯一。分野の代表格(歌舞伎・観光立国推進基本計画)を素直に選ぶ傾向 |
| ChatGPT | 周期パターンの機械的適用。「3年連続 → 1年空白 → 復帰」の型を最も一貫して使い、歴史5項目のうち4つ(家康・信長・家光・義満)がすべてこの型。制度名を好み、推論の限界を自ら注記した唯一のAI |
ひとつ注意点も見つかりました。Gemini は吉野川を「連続しているから続く」と読む一方、徳川家康は「2025年に休んだから戻る」と読んでいます。同じ回答の中で逆向きの論理を使い分けているわけで、後づけで理屈がつけられてしまう危うさが出ています。ChatGPT も、地域通訳案内士について「周期上2026年は本来空白年」と自分で認めた上でなお選んでいました。
AIの「根拠」は、それらしく見えても検証が要る——この実験で一番の学びはそこかもしれません。
で、これをどう使うか
実用面での結論はシンプルです。
- 3者一致の4項目(箱根・芦ノ湖/琵琶湖/訪日客の国・地域別ランキング/募集型・受注型企画旅行)は、少なくとも「データから素直に導ける」項目。押さえておいて損はありません
- 歴史は一致ゼロ=AIの予想を当てにしない。有力人物が多すぎて絞れないので、秀吉・家康・信長・家光・信玄・義満は全員まとめて見ておくのが正解
- 分野レベルの一致は信じ、項目レベルの一致は話半分に。千葉が来るという読みは3者一致でも、成田か犬吠埼かは誰も知りません
実際の問題として解いてみたい方は、AI予想問題36問にこの集計から作った4択を用意してあります。集計データそのものの中身は過去5年の出題傾向をAIで全分析へ。
この実験の限界
最後に、正直なところを書いておきます。
3者一致は「正しさ」の証明ではありません。 3つとも同じ集計データしか見ていないので、データに偏りがあれば3つとも同じ方向に間違えます。独立した観測ではなく、同じ材料を3人に読ませただけ——これは統計でいう独立性がない状態です。
そのうえ、渡した集計自体が私がAIに過去問PDFを読ませて抽出したもので、抽出漏れの可能性があります。記事中の「直近2年ゼロ」はすべて「私が抽出した2,456項目の範囲では確認できなかった」という意味です。
それでも、この実験には意味があったと思っています。歴史のように答えが割れる科目と、一般常識のように割れない科目がある——それが分かっただけで、勉強時間の配分は変わります。割れる科目に山を張るのは危ない、という判断材料になるからです。
まとめ
- 同一データ・同一プロンプトで Claude・Gemini・ChatGPT に予想させ、3者一致はのべ60項目中4項目だった
- 一般常識と実務は本命まで完全一致、歴史は一致ゼロ。科目ごとに「データから決まる度合い」がまったく違う
- AIごとに読み方の癖がある(Claude=空白重視/Gemini=連続重視/ChatGPT=周期パターン)
- 一致は正しさの保証ではない。割れた科目には山を張らない、という使い方が実用的
一次試験全体の戦い方は一次試験の対策まとめに、必要な勉強時間の目安は難易度と勉強時間にまとめています。