通訳案内士 二次試験の外国語訳を制する「略字メモ術」|実際に使った記号一覧
二次試験の外国語訳パートは、試験官が読み上げる日本文をメモして、即座に英語にするタスクです。ここで差がつくのは英語力より先にメモの技術。二次対策の記事でも触れた略字メモ術を、この記事で深掘りします。
外国語訳は「その場処理」が試される唯一のパート
まず位置づけを整理します。二次口述は1人あたり約10分の面接で、次の3つのパートで構成されます。
| パート | 内容 |
|---|---|
| プレゼンテーション | 提示された3つのお題から1つ選び、約2分間話す |
| 外国語訳 | 読み上げられた日本文をメモし、逐次通訳で英語にする |
| 実務質疑(シチュエーション) | 観光客役の試験官とのやりとりで対応力を見られる |
プレゼンと実務質疑は「事前に仕込んだ内容を出す」性格が強いのに対し、外国語訳だけは初見の日本文をその場で聞き、その場で変換するパートです。仕込みが効きにくいぶん、当日の処理手順——つまりメモの取り方——の完成度が、そのまま出来に直結します。
なぜメモが勝負なのか
読み上げは1回きりで、記憶はあっという間に消えます。かといって全文を書き取ろうとすると、書いている間に次の文を聞き逃す——これが典型的な失敗パターンです。逆に、メモをほとんど取らずに記憶だけへ頼ると、今度は訳の途中で数字や順序があいまいになります。
つまりメモ術の本体は、「記憶に任せる部分」と「紙に固定する部分」の分業を先に決めておくことです。文の骨組みの復元は記憶の仕事、忘れやすい数字・固有名詞は紙の仕事、と割り切ります。
原則はこうです。
- 全部書かない。主語・動詞・数字・固有名詞の「骨」だけ拾う
- 頻出語は記号化しておく(ただし10個程度まで)
- 迷ったらひらがな最速書き。きれいに書く必要はゼロ
私が実際に使っていた略字
| 意味 | 略字 | ひとこと |
|---|---|---|
| 日本・日本人 | J | 最頻出。1画で書ける。国と人をわざわざ区別しない |
| 外国人観光客 | Fv | foreign visitor。これも超頻出 |
| 人気・好評 | ♡ | 「外国人に人気」構文が多い |
| 世界 | 🏳 | 旗のマーク。国旗のイメージ |
ポイントはJを「日本」と「日本人」で共用していることです。どちらの意味かは文脈で必ず分かるので、区別する記号を増やすほうが損になります。
そして、ここに増加・減少の矢印と、因果の「→」を足せば、試験で出る日本文の骨組みはほぼカバーできます。「訪日外国人が増えていて、〇〇が人気」という頻出パターンなら Fv↗ 〇〇♡ の5文字で足ります。
「たった4つ?」——少ないのには理由があります
略字は、数を増やすほど強くなる道具ではありません。略字の価値は「出現頻度×省ける画数」で決まります。毎回のように出る語を1〜2画に圧縮できれば効果は絶大ですが、たまにしか出ない語を記号化しても、本番で思い出すコストの方が高くつきます。だから単語の置き換えは頻出語に絞り、残りは次の「汎用記号」でまかなうのが効率的です。
文の構造は汎用記号で書く
単語の略字とは別に、文と文の関係を表す記号もそろえておくと、メモが一気に速くなります。ノートテイキングの定番なので、覚える負担はほぼゼロです。
| 意味 | 記号 |
|---|---|
| 増加・上昇 | ↗(右上がり) |
| 減少・下降 | ↙(左下がり) |
| 因果・変化・移動 | → |
| 並列・追加 | + |
| 否定・〜ない | × |
| 比較(多い/少ない) | > < |
| およそ・約 | 〜 |
増減の矢印は、まっすぐの↑↓ではなく斜めの↗↙を使っていました。上下の矢印でも意味は通りますが、斜めのほうが横書きの流れを止めずに書けます。どちらでも構わないので、自分がどちらを使うか決めて統一しておくことのほうが大事です。
たとえば「近年、日本を訪れる外国人観光客が増えており、伝統文化を体験できるツアーが人気を集めています」なら、Fv↗ 伝統体験♡ だけで復元に足ります。助詞や修飾語は書かない。メモに残すのは名詞と矢印だけ、くらいの感覚でちょうどいいです。
略字は「自作」してこそ武器になる
大事なことを言うと、他人の略字リストを丸暗記しても本番で使えません。思い出すのに時間がかかったら本末転倒だからです。自作の手順:
- 過去問・想定問題の日本文を眺めて、自分がよく書く単語を10個拾う
- それぞれ「1〜2画で書ける」記号を決める(アルファベット1字・記号・絵、何でもOK)
- 一晩寝かせて、翌日メモを見て意味を思い出せるかテストする。思い出せなかった記号は捨てる
この「翌日テスト」が重要です。作った直後は全部覚えていますが、本番の緊張下で使えるのは体に馴染んだ記号だけ。だから作りすぎない(私は10個程度に絞りました)。
拾う単語のあたりの付け方
「自分がよく書く単語」は、過去問の日本文を数題ぶんメモに変換してみるとすぐ見えてきます。例年、外国語訳の題材は観光・文化・食・年中行事あたりが中心なので、「観光客」「伝統的な」「人気」「世界遺産」「増えている」のような語はどうしても繰り返し登場します。自分のメモに3回以上出てきた語だけを記号化の候補にすれば、自然と10個前後に収まるはずです。
数字と固有名詞は略さない
逆に、数字・固有名詞・年号は略字にしないでください。これらは記憶で復元できない「読み上げる情報」で、正確さが命だからです。桁をひとつ間違えて思い出した時点で、記号化で稼いだ時間は帳消しになります。数字は単位(万・億)まで含めてそのまま書く、地名・人名はひらがな・カタカナの最速書きでそのまま残す。略字はあくまで「何度も出る普通の単語」専用の道具です。
練習法:読み上げ速度を再現する
練習は3段階に分けると、挫折せずに積み上がります。
- 目で見て変換する——まず日本文を「見ながら」略字メモに変換します。聞き取りと同時進行にする前に、記号の運用だけを先に体へ入れる段階です
- 聞きながら書く——無料の読み上げソフト(音読さん等)にニュースや観光庁の文章を読ませて、0.75倍速でメモ→英語で復元、を繰り返す
- 英語で復元まで通す——メモだけを見て英訳し、元の日本文と突き合わせて「骨を拾えていたか」を確認します
- 本番の読み上げは市販対策本のCDよりずっとゆっくりです。速い教材で練習しておけば本番が楽に感じます
- メモを見ながら英語にする練習では、メモに書いていない部分を記憶で補う感覚を掴んでください。メモは杖であって、全文の代わりではありません
素材は、観光庁の文章(観光白書など)が観光系の語彙の練習になるのでおすすめです。教材選びの全体像は二次試験のおすすめ教材まとめに、一人練習の仕上げとして人相手で本番形式を回す方法はオンライン英会話活用法にまとめています。
本番でのメモの心得
- 聞くことが8割、書くことが2割。書くのに夢中になって文意を取り損ねるのが最悪
- 数字と固有名詞だけは正確に書く(ここは記憶に頼らない)
- 訳し始めたら、メモに固執せず自分の使い慣れた構文に乗せて言い切る(対策記事の「忠実に訳さなくてOK」の通りです)
- 用紙のサイズや罫線に依存しない書き方をしておくと安心です。1文ごとに行を変えて縦に並べる、訳し終えた文は線で消す——このシンプルな運用なら、どんな紙でも同じ動きができます
- 読めない記号にぶつかったら、解読にこだわらず記憶と平易な言い換えで前に進む。止まって考え込むのが一番もったいないです
よくある質問
まとめ
- メモは「骨だけ」。J(日本・日本人)・Fv(外国人観光客)・♡(人気)・🏳(世界)+斜め矢印↗↙で頻出パターンはカバーできる
- 略字は自作×10個まで×翌日テストで体に馴染ませる
- 数字・固有名詞は略さずそのまま書く。文の構造は汎用記号(↗↙→+×)で
- 練習は読み上げソフトで。聞く8割・書く2割の配分を忘れずに
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