通訳案内士 二次プレゼン、私は何を仕込んだか【実録・全公開】|「再出予測」が本番で的中するまで
テーマの選び方と型では一般論としての方法を書きました。この記事はその実録編です。私が2025年度の二次口述(12月14日)に向けて実際に回していた管理シートを開きながら、何を・いつ・どうやって仕込んだかをそのまま公開します。
土台にしたのはPEPの「出題予想」
ゼロから予想を組んだわけではありません。土台にしたのは、PEP英語学校が無料公開しているメインレジュメの第8講「出題予想」です(PDFはこちら。私が特に使ったのは42〜43ページ)。過去問がランク別に整理されています。
| 分類 | 中身 | 題数 |
|---|---|---|
| ランク1 | 過去に2回出題 | 37題 |
| ランク2 | 過去に3回出題 | 8題 |
| ランク3 | 過去に1回出題+α | 94題 |
| 新問題 | 過去問から推測できるもの・カレントなもの | 30題 |
レジュメの考え方で刺さったのが「どんな題が出るか、よりも、何を勉強しておくべきか」という一文と、関連テーマでの再出という視点でした(例:「冬至」が2回出た翌年は同じ題は出にくいが「ゆず湯」なら出うる/「うどん」→「蕎麦」)。ここを起点に、自分の管理シートへ落とし込みました。
なぜ他の定番教材ではなかったか
二次対策の教材選びは「多すぎ」と「古すぎ」の両方が落とし穴でした。私が実際に触って出した結論です。
| 教材 | 私の評価 |
|---|---|
| ハロー通訳アカデミー「日本的事象英文説明300選」系の音声 | おすすめしません。2周しましたが、ほとんど意味がなかったというのが正直な感想です。内容が古く、今は出題されない項目も多い |
| True Japan School「400選」 | 網羅性は高いものの、今度は多すぎます。あの量を覚えきるのは現実的ではありませんでした |
| PEPの出題予想(第8講) | ちょうどよかった。ランク分けで優先順位がつくので、限られた時間の投下先が決まる |
定番と呼ばれる教材でも、自分の残り時間と噛み合わなければ切る判断が要ります。私は300選系に時間を使った分を取り返すために、10月以降は予想リストベースに完全に切り替えました。
結論:仕込みは「30テーマ」ではなく2層だった
よく言われる「30テーマ準備」は、実態としては次の2層になりました。
| 層 | 中身 | やり方 |
|---|---|---|
| 核(作り込み) | ランク1+2=過去に2回以上出題された約45テーマ | キーワード表を作り、録音して3周 |
| 直前の総なめ | ランク3・新問題・自分の再出予測、合計200テーマ超 | 試験前2週間で1テーマずつ声出し。日付と手応え(⭕️)を記録 |
「30個の原稿を丸暗記」ではありません。深く仕込む核と、浅く広くなめる外周の2段構えです。この構造にした理由は単純で、本番は3択だから。核が薄くても外周で一度でも口に出したテーマなら、本番で戦えます。
核:ランク1・2(2回以上出題)から作り込む
核に据えたのは、レジュメのランク1(2回出題・37題)とランク2(3回出題・8題)です。ランク1から抜粋(括弧は出題年度)。
里山(2019、2021)/流鏑馬(2018、2021)/鳥居(2018、2021)/鎖国(2014、2020)/除夜の鐘(2018、2020)/おでん(2015、2019)/千羽鶴(2017、2019)/カプセルホテル(2015、2019)/鹿威し(2015、2018)/打ち水(2015、2018)/日本の城(2015、2016)/初詣(2014、2016)/中山道(2015、2022)/門松(2017、2022)/なまはげ(2015、2022)/恵方巻(2015、2022)/合気道(2016、2023)/盆踊り(2018、2023)/熊野古道(2020、2023)/風呂敷(2017、2023)——ほか
2回出たテーマは3回目がある。単純ですが、この仮説がのちに本番で証明されます。
仕込みの実物:原稿ではなく「キーワード表」
各テーマは文章の原稿ではなく、話す順番に並べたキーワード表にしました。列は「①定義(+場所・行き方)→②定義の補足→③特徴→④特徴2→⑤周辺環境」。実物から2つお見せします(英日混在なのが実物です)。
門松
- ① Traditional decoration to invite the Deity of the year(歳神様を迎える正月飾り)
- ③ 松=green for all year だから神聖/竹=grows straight だから purity and growth
- ⑤ 同じ歳神様つながりで「鏡開き」に接続できる
除夜の鐘
- ① It is struck 108 times
- ③ 108 symbolizes the 108 worldly desires. By striking 108 times, we let go of our desires and purify ourselves
- ⑤ 初詣・正月行事へ接続
文章にしないのは意図的です。丸暗記は1語飛ぶと全部止まるので、覚えるのは骨組みだけ。そして各テーマに録音チェック欄(1回目・2回目・3回目)を作り、自分の声で吹き込んでは聞き直す、を3周しました。原稿を「書けた」ではなく「録音できた」を完了条件にすると、仕込んだ気になっただけのテーマが消えます。
外周の200テーマ超:予測は2本立て
直前2週間は、核以外を広く浅くなめました。練習台に載せるテーマは、2つの予測で選んでいます。
予測①:再出予測——レジュメの発想を自分で延長したものです。過去年度の出題テーマを年度別に一覧化し、「数年前の年度のテーマは再出しやすい」と仮定して、古い年度の出題リストをまるごと再出候補として練習台に載せました。たとえば2021年度の出題からは、犬山城・中秋の名月・七福神・わらび餅・南部鉄器・落語・城下町・出島……を候補に。ランク3(1回出題)の網羅と実質同じ作業ですが、年度単位で並べると「そろそろ来る年度」が見えるのが利点でした。
予測②:未出題の定番を狙う——逆に「定番中の定番なのに、まだ一度も出ていない」テーマは、いつ出てもおかしくない。私が当時マークしていた筆頭が白神山地でした。世界自然遺産は数が少ないのに、白神山地だけまだプレゼンのお題になっていない——なら出る、という読みです。過去問リストの裏返しなので、誰でも同じ手が使えます。
練習グリッドには1テーマずつ練習した日付と手応え(⭕️/「多分大丈夫」)を記録。12月の練習履歴を見返すと、12/6に七福神、12/9に白神山地、12/11に獅子舞……と、試験直前まで1日数テーマずつ潰しています。声出しは1テーマ2分なので、30テーマなめても1時間。直前期の時間対効果としては最強の部類でした。
仕込みの肝:説明に「上位概念」を入れる
テーマを何個仕込んでも、2分間を持たせられなければ意味がありません。ここで効いたのが、説明の中に一段上の概念を差し込む型です。知らないお題が出たときの保険にもなります。
例1:鹿威し(ししおどし)
日本庭園にあること、竹筒に水がたまって傾き、石を打って音が鳴る構造——これだけ説明すると、だいたい50秒で話が終わります。2分には1分以上足りません。
そこで、こう繋ぎます。
これは日本の「わびさび」の精神を表しているんです
すると何ということでしょう。わびさびの説明が丸ごと乗るので、もう40秒は稼げます。 しかも「音のない庭に、時折鳴る音があることで静けさが際立つ」という話にできるので、内容も濃く見えます。
例2:床の間
床の間そのものの説明は短い。ここも一段上へ逃げます。
床の間は書院造り——現代の日本家屋のルーツになった様式——の一部です
書院造りの話に接続できれば、畳・襖・違い棚まで広がり、時間も内容も一気に持ちます。
だから根幹テーマ(わびさび・禅・おもてなし・書院造り・神道と仏教)を深掘りしておくのが最優先になります。ここさえ厚ければ、どんなお題からでも時間を稼ぎつつ、内容を濃く見せられる。個別テーマを100個浅く持つより、根幹5個を深く持つほうが強い、というのが実感です。
抽象化の考え方そのものは二次対策の記事、接続先の一覧はテーマ選び編にまとめています。
そして本番:3択のうち2つが「仕込み済み」だった
本番で提示された3択は「七福神」「白神山地」「おじぎ」。
- 七福神——レジュメのランク3に掲載+2021年度出題として自分の再出予測リストにも掲載→12/6に練習済み
- 白神山地——予測②「まだ出ていない世界自然遺産」としてマーク→試験5日前の12/9に練習済み
- おじぎ——ノーマーク
3つのうち2つが仕込み済み。私は七福神を選び、合格しました(本番でどんな惨事と奇跡が起きたかは10分間の実録で全部書いています)。
これは「ヤマが当たった」自慢ではありません。公開されている予想リストを土台に、再出予測と未出題狙いで網を広げれば、3択のうち1つ以上を引く確率は構造的に上がる——その仮説どおりの結果が出た、という報告です。同じ材料は誰でも無料で手に入ります。
今から再現するなら:時期別のやることリスト
- 一次試験直後〜10月:PEPのメインレジュメ第8講(無料)でランク1〜3と新問題を入手し、そのまま自分のシートへ。あわせてJNTOの過去問ページで年度別の並びも作る。ランク1・2を核リストに確定
- 10月〜11月:核テーマのキーワード表づくり+録音1〜2周目。2ヶ月計画のペース配分で
- 試験前2週間:ランク3+自分の予測(再出・未出題狙い)を総なめ。1日30分=15テーマ。手応えの記録を忘れずに
- 並行して:声に出す練習相手が要る人はオンライン英会話の使い方へ。メモの取り方は略字メモ術
まとめ
- 土台はPEPのメインレジュメ第8講「出題予想」(無料・42〜43ページ)。ランク1〜3+新問題の分類をそのまま使う
- 実態は2層:核=2回以上出題の約45テーマ(キーワード表+録音3周)/外周=200超の総なめ(1テーマ2分の声出し)
- 完了条件は「原稿が書けた」ではなく「録音できた」
- 予測は当たる。本番3択のうち七福神(ランク3+再出予測)と白神山地(未出題の世界自然遺産)の2つが仕込み済みだった
テーマ選定の考え方は選び方編、全体戦略は二次対策の記事へ。本番の10分間で実際に何が起きたかは、実録・二次口述の10分間に続きます。