通訳案内士 二次口述、本番10分間の実録|プレゼン・外国語訳・シチュエーションで何が起きたか
対策法は二次口述 一発合格の対策法に、仕込みの中身は実録・テーマの仕込み方に書きました。この記事は本番の10分間そのものの記録です。きれいごと抜きで、恥ずかしい部分ごと残します。
先に結論:3パートの難易度は同じではない
10分間は3つのパートでできていますが、難易度はまったく均等ではありません。受け終わった実感はこうです。
| パート | 難易度 | 理由 |
|---|---|---|
| ① プレゼン | ★★★ 最難関 | お題を選び、2分を自力で埋める。ここでこけると、残りもリズムに乗れない |
| ② 外国語訳 | ★ 易しめ | かなりゆっくり読んでくれるので、聞き取りで詰むことは考えにくい |
| ③ シチュエーション | ★ 易しめ | 知識ではなく対応力。相手に寄り添いさえすれば成立する |
つまり、対策時間はプレゼンに寄せるのが正解です。プレゼンは最初のパートでもあるので、ここで気持ちよく話せると残り8分の流れがまったく変わります。逆に②③は、やり方さえ知っていれば伸びしろが小さい。仕込みの実録でテーマ準備に紙幅を割いているのは、この配分が理由です。
私の受験回:時間帯は13:00〜14:00
二次口述は受験者が時間帯に分けられ、指定された枠で受験します。私の枠は13:00〜14:00でした。当日の持ち物・服装・待ち時間の過ごし方は当日の準備ガイドにまとめているので、この記事は試験室に入ってからの話に絞ります。
① プレゼンテーション(2分)
提示された3択と、シンキングタイム30秒
紙で提示された3つのお題は——「七福神」「白神山地」「お辞儀」。
ここで小ネタをひとつ。シンキングタイムは30秒ですが、実際にはお題の紙が薄く、裏から透けて読めました。つまり紙が配られた瞬間から考え始められた、ということです。体感の持ち時間は30秒より長かった。会場や年度によるとは思いますが、「配られた瞬間から勝負が始まっている」つもりでいると得をします。
3つのうち白神山地と七福神は仕込み済みでした(なぜ的中したかは仕込み編へ)。どちらで話すか迷った末、七福神を選択。
実際に話したこと(と、その惨状)
内容としては「七福神は総称であって、いろいろな国の・違う宗教の神様たちが『福をもたらす』という一点でまとめられたグループなんですよ」という話をしました。
ただし本番の私は——頭は真っ白、手はめちゃくちゃ震えていました。準備してきた通りに整然と、とはいきません。しかも1分40秒あたりで話すネタが尽きました。2分に20秒足りない。
そこであわあわしながら付け足したのが、この一文です。
いろいろな国の神様が混ざっているのは、日本の宗教観の折衷主義(syncretism)を反映しているんですよね
これで着地。振り返るとこの最後の一文が効いていて、個別の知識を「日本の宗教観」という抽象に接続できた形になりました。抽象化戦略が、崩れた本番でも最後に効いた瞬間です。
そして話し終えた直後、ネイティブ試験官が採点用紙に大きく何かを書き殴るのを目撃。「おいおい、不合格って書いてないだろうな」と思いながら質疑応答へ進みました。(結果は合格だったので、あれは加点だったのだと思うことにしています。)
質疑応答:緊張で口走った珍英語
試験官「それぞれの神様は、全員が同じ力を持っているのか?」
これは仕込みが効きました。「大黒天はインドの神様で財運を司る、恵比寿は日本の神様で……」と個別に説明していきます。恵比寿が釣り竿を持っていることは覚えていたので、「豊漁をもたらす神様」と言いたかった。
が、気づいたときには口が勝手にこう言っていました。
agricultural fertility in the sea(海の……農業的な豊穣?)
海で農業。緊張とは恐ろしいものです。それでも試験は続き、結果は合格でした。言い間違いや珍妙な表現があっても、話し続けていれば落ちません。
② 外国語訳
読み上げられた日本語は「日本の城」についてでした。
- 試験官はかなりゆっくり話してくれたので、聞き取りで困ることはありませんでした
- 苦しんだのはむしろ自分の字の汚さ。急いで取ったメモが後から読めないのは、本番あるあるです(対策は略字メモ術へ)
- 出来は体感で8割超
正直な感想として、外国語訳は過度に対策しなくていいパートだと思いました。極端に速く読まれることはなく、聞き取れずに詰む場面は考えにくい。それよりメモの取り方(自分が後で読める字で、要点だけ)に時間を使うほうが効きます。
③ シチュエーション(実務質疑)
設定は——足が悪くて天守に登れないご夫婦。ただし庭園が好きという情報つき。この「庭園が好き」がヒントです。
実際のやり取りを再現します。
試験官「せっかく来たのに登れない。がっかりだよ。他にどこかいい場所はないかな?」
私「お気持ちわかります。このお城は少し高台にあるので、登らなくてもいい景色が見られますよ」
(お城が高台にあるという設定は、その場で私が勝手に足しました。具体的な情報がないなら、矛盾しない範囲で自分で状況を作ってよい——これは現場のガイドと同じです。)
試「だいたい、なんでエレベーターをつけていないんだ」
私「そのお気持ちもわかります。ただ、エレベーターをつけるとお城が壊れてしまうかもしれないので(it might collapse)」
ここで試験官が突如爆笑。何か変なことを言っただろうかと焦りましたが、顔には出さず「俺、面白いっしょ」という表情を作っておきました。
試「他に見るものはないのかい?」
私「お城の周りに庭園があるので、そちらはいかがでしょう。かなり広いので、ご一緒に散歩する(stroll)のも楽しいですよ」
試「エレベーターがあるお城はないのかなあ」
私「いくつかありますよ。改修してエレベーターを設置したお城があったはずです」
(うろ覚えだったので、城名は出しませんでした。不確かなことを断定しないのは実務でも試験でも同じです。)
試「そうなんだね。まあ、庭園に行くのは楽しそうだ。ありがとう!」
——終了。
このパートで効いたこと
- まず共感する——「お気持ちわかります」を挟んでから代案を出す。実務質疑はホスピタリティの試験です
- 必ず代案を出す——「できません」で終わらせない。庭園という手持ちの情報を使い切る
- 足りない情報は自分で作る(矛盾しない範囲で)。「高台にある」で景色という価値を作り出せた
- 知らないことは断定しない。「あったはず」は「あったはず」のまま言う
想定問答の作り方はシチュエーション想定問答10選にまとめています。
終わってみて:手応えと結果
試験直後は謎の自信と解放感で高揚していました。が、冷静に思い返すと「受かっているか微妙かも……」と不安になってきます。頭は真っ白、手は震え、海で農業をやり、試験官には爆笑される——胸を張れる出来ではありません。
それでも合格でした。
二次口述は減点方式の一発勝負ではなく、合格率は「2人に1人」で安定しています。試験官が見ているのは英語の完璧さではなく、この人にお客様を任せられるか。だから、詰まっても言い間違えても、最後まで感じよく話し切った人が受かります。
まとめ
- お題の紙は透けて読めた——シンキングタイムは30秒より長く使える可能性がある
- プレゼンは頭真っ白・手震え・1分40秒でネタ切れ。それでも最後に抽象(宗教観)へ接続して着地できれば戦える
- 質疑で"agricultural fertility in the sea"と口走っても合格する。止まらないことが最優先
- 外国語訳はゆっくり読まれる。対策の重心はメモの読みやすさ
- シチュエーションは共感→代案。情報が足りなければ矛盾しない範囲で自分で作る
これから受ける方へ。当日の持ち物と過ごし方は当日の準備ガイド、直前の仕上げは1ヶ月短期決戦プラン、合格後の動き方は合格後のロードマップへどうぞ。完璧じゃなくていいんです。行ってらっしゃい。